「AIがペラペラ喋る動画」にハマった家族の言葉が、全部「嘘」に聞こえるようになった
文責:納品に疲れたクリエイター
家族が今日起きたトピックを話してくれても、私には「どうせそれも嘘でしょ」という冷めた感情しか湧いてこないんです。
実の家族の言葉が、全部「嘘」に聞こえる。
そんな悲しい現象を引き起こした元凶は、YouTubeから毎日流れてくる「AI音声がつらつら流れるだけの動画」でした。
画面にはフリー素材の映像がただ流れ、そこに感情のない機械的なAI音声がペラペラと雑学や豆知識を垂れ流しているだけの動画。
属人性は皆無の、極限まで手抜きされたあの動画です。
最初は「また見てるのか」と眺めていただけでした。
でも、毎日毎日その適当な動画を真に受けて話しかけてくる姿を見ているうちに、私の感情はどんどん擦り減っていきました。
手抜き動画特有の「AIの読み間違い」が不快すぎる
あれを作っている人は、絶対に投稿前に自分で確認していません。
具体的にいうと「四球(よんたま)」とか「左腕(ひだりうで)」投手がとか、「怒り(おこり)」の感情とか。
「結構真剣に見てるじゃん笑」って思われるかもしれませんが、仕方ないんです。
家のリビングでずっと流れてるんですから。
イントネーションもアクセントもバグり散らかしていて、聞いているだけで不愉快極まりない。
「あ、これはAIに作らせた原稿を流し込んで、投稿者は一度も通しで聴かずにそのままアップしたな」というのが透けて見えて心底冷めるんです。
再生数を稼ぐためだけに生まれた一大ジャンル「日本称賛系」
「日本すげえ」
結局言いたいことは全部同じなんです。
「新幹線」「日本車」「秋田犬」…。
野球だろうが何だろうが、結局は「世界が驚愕した日本人の行動」みたいな自画自賛ネタばかり。
確かにメジャーで活躍する日本人選手や、海外で当たり前になっている日本の技術はすごいです。
だからこそ、それが手抜きAI音声で再生数稼ぎのネタにされているのが許せないんですよね。
しかも、これって構造としてはテレビの番組と全く同じなんですよね。
よく考えたら「プロジェクトX」とか、特番でよくある「伝説の社員」みたいな番組のフォーマットと一緒です。
もちろん、テレビのそういう番組は作り手が膨大な取材と、本物の情熱をかけて人間ドラマとして丁寧に作っているからこその感動があります。
だからこそタチが悪いのは、その「人が感動するフォーマット」だけを丸パクリしているという点です。
テレビが長年かけて作り上げたフォーマットだけを都合よく拝借し、裏取りも取材もしないまま、AIの適当な捏造を流し込む。
例えば、メジャーリーグのレジェンドであるオルティスやジーター、ランディ・ジョンソンらが「菅野が巨人にいくために1年浪人した話」や「村上や岡本が1年目は二軍で〇〇」みたいなエピソードを知っていて絶賛しているみたいな構成です。
「…いや、菅野の話はちょっとはあり得るのかな?」と一瞬思いますが、冷静に考えれば「同じ日本人でもない海外のレジェンドがそんな話知ってるわけねえだろ」って話なんですよね。
無駄に「いい声」とアホすぎる擬音の読み上げ
さらに不快感を増幅させるのが動画の演出です。
AIが作った(無駄に上手い)起承転結のストーリーを、低音の効いた「イケボ(いい声)」が朗々と読み上げる。
かと思ったら
「ワン(イケボ)」
「ぐわわわわーん(イケボ)」
…何だそれは?
吹き出すどころか不愉快極まりない。
なのに、ストーリーに引き込まれて真剣に聞き入っている人もいるのです。
声優さんの顔に泥を塗るような動画でお金を稼いでいる
そもそも、声優の津田健次郎さんが自身の声を生成AIで無断模倣された動画について裁判を起こしたニュースは記憶に新しいところです。
プロが人生をかけて磨き上げた「声」を泥棒し、AIに作らせた原稿を読ませて再生数を稼いで、懐を潤している奴らがいる。
そんな社会問題が報じられているにも関わらず、そんな動画を再生してお金稼ぎ目的の奴らにチャリンチャリンと広告収入を投げ込んでいる姿を見ると、その無神経さとリテラシーの低さには呆れを通り越して吐き気がします。
「本物」と「偽物」の区別すらつかなくなっていく
そしてもっと恐ろしいのは、そういうくだらない「AIが喋っているだけの動画」ばかり見続けていると、脳が「複雑な情報」を処理できなくなっていくということです。
ただ流れてくる刺激に慣れきった結果、 構成まで練り込まれた質の高い作品の「情報量」に脳が追いつけなくなります。
だから、画面に映る「髪色がすごい」「太ってる」「しょうもない下ネタ」みたいな小学生でも理解できる単純なことでしか笑えなくなっていく。
そういう動画を見ている人に限って、そうなっていくんです。
さらには、もはや「AIで作った人が喋っているのか、本物の人間なのか」の区別すらついていません。
極めつけは、家族がYouTubeに流れてくるリアルな野球ゲームのプレイ動画を、本物の野球中継だと思って熱心に見ていたことです。
「打った!!」と歓喜している姿には、呆れを通り越して悲しくなりました。
確かに今のゲームのグラフィックはすごいです。
でも、画面の向こうにある「本物」と「偽物」の区別すらできないほど、AIコンテンツに脳が侵食されてしまっている…
さすがに居たたまれなくなった私は、Netflixを登録してWBCを見られるようにしてあげました。
あなたの言葉の価値は削られていませんか?
ネットのコピペ、嘘、捏造、手抜きAIボイス。
そんな「出処の怪しい情報」ばかりを毎日聞かされ続けた結果、私の脳内には「この人が話す言葉は、一旦すべて疑わなければならない」という冷め切ったフィルターが完成してしまいました。
「大谷が今日はホームランを2本打ったよ」というような本来は嬉しいはずのニュースですら、どこか嘘くさく聞こえてしまうのです。
言葉の「信頼」というのは、こうして削られていきます。
「大変な家族の話だな」と他人事で読んでいたあなた。
今日、家族や友達にドヤ顔で話していたその雑学やニュース…
本当に「本物」ですか?
あなたの言葉の価値、削られていませんか?
今回は以上です。
あなたの生活がちょっと楽しくなりますように。
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